○唐津市近代図書館 佐賀県唐津市
1.施設の概要と特徴
・ 唐津駅前の好立地に広い前庭を持ち、噴水、モニュメント、イベント
のできるステージなどがある。建物はレトロな明治時代の建築を思わ
せるデザイン。
・ 唐津の図書館の沿革は、明治43年に創設と古いが、現在の場所へ新築
移転は平成4年。敷地4461u、4階建、延4350u、総工費約2
6億円。
・ 1階、風格あるエントランスの左手は100坪の美術ホール。年3回企
画展を行うほか、美術館無料開放の制度を設ける。また特別展に併せて
のコンサートも開催。また1階右手には喫茶コーナーがある。
・ 2階が図書館、蔵書23万冊、うち開架7万冊。
・ 3階は書庫、事務室のほか、ビデオルームを整備。100インチ大画面
で映写会を行っている。
・ 4階は一般貸し出しの研修室が2室、コンピュータルームや学習室のス
ペースであるが、現在パソコン教室は休止中。
・ 図書館ボランティアが充実。会員140人。常に活動している市民は2
0人。
・ 図書配送センターが各小中学校、公民館への図書の配送を行う。各校2
00冊単位で年に3回(学期ごと)。団体貸し出しにも応じる。この制度
は特に離島の人々から大変喜ばれている。
・ 図書館から喫茶室まで、館全体の年間利用者は約19万人。
2 感想
丸亀市の現在の図書館は、これまで競艇収益による豊かな市の財源の背景のもと、図書新規購入予算年間4000万円と、全国でも指折りの額を誇っておりましたが、今春、新年度の緊縮予算が発表され、一気に半減の2000万円となりました。
これには3月議会でも議論があり、激しい反対論も出ましたが、大変残念なことながら、了承せざるを得ませんでした。
唐津市で伺ったところ、年間予算は2400万円だが、こちらも減額されるもよう、とのことでした。こうした費目で予算カットが行われることは、まことにやりきれない思いがします。
丸亀市の図書館は今春から、定期休館日である月曜について、第1、第3月曜日は開館することとなりました。このように、予算の減額をサービスの向上や図書のさらなる利活用、利用者増、さらには学校図書室の司書の配備なども含め、多面的に機能の向上で予算カットをカバーしてほしいと思います。
その点、唐津市における図書館ボランティアの充実や学校への図書配送は、その好例として、参考になると思います。
丸亀市でもコミュニティセンターの図書室の充実や本の入れ替えなどが行われ、また白鳥号による巡回図書館も活発ですが、図書館運営や読み聞かせ、点字サークル、朗読の「声のボランティア」などといった市民の図書館への「参画」もまた重要な視点であり、そうしたソフト面での利活用の充実を今後一層、推し進めるべきだと考えました。
先日、ある市民から、小学校に通う子どもたちに図書館の休館日を知らせてほしい、という声をいただきました。
図書館に問い合わせたところ、児童個々人には配布していないが、市広報の「図書館だより」のコーナーなど、周知には努めているとのことでした。今回総予算も減額となり、また反面休館日を開館させるなどの大きな変動がありますから、この際さらに利用啓発に努めてほしい旨、要望しておきました。
さて、唐津図書館はその外観のレトロな面持ちと異なり、名称は「近代図書館」とされています。
コンピュータルームがあり、市民に開放された研修室のほか、美術ルーム、喫茶室まで完備しているのは、まさしく「近代」的と言えるでしょう。建設に際してのコンセプトが、丸亀市とは異なるのですからいたしかたありませんが、利用者アップを図ることはすべての公共施設の今日的課題です。
一人でも多くの市民の方々に利用され、親しまれるよう、市民からの要望などにも注意深く耳を傾け、工夫点を提言していきたいと思います。
猪熊弦一郎現代美術館と一体となった建築設計であったことから、本来、現在の中央図書館の場所に絵画展、書道展などの市民スペースが確保されるべきであったとの声は強くあります。唐津市近代図書館を訪問し、あらためてそのことを想起し、天井の高い、ギャラリーとして満足いただける場所を、財政事情が許される事情となったときには速やかに、実現したいものだと思いました。